
大阪・都島のイタリアン「ピッツァフォルトゥーナ」を営む古川さん夫婦。2人が取り組んだのは、名物メニューの「揚げピザ」を急速冷凍した『冷凍揚げピザ』の販促だ。
2018年に開店するも、ほどなくしてコロナ禍へ。店内飲食の再開が見通せない状況下、テイクアウトで食い繋ぐが、飲食店の商圏は一般的に半径3km。「客層を広げるために思いついたのが、全国発送できる通販でした」と麻衣さんは振り返る。事業再構築補助金とコロナ特別融資を活用し、数百万円を投じて急速冷凍機の設置と内装工事を実施した。しかし、冷凍通販は飲食店経営とはまったく異なる知見が必要になる。「イチから勉強し、周囲のアドバイスをいただきながら、2年をかけてようやく全国発送の体制を整えました」。

2023年にリリースした『冷凍揚げピザ』はまずまずの出だしだったが、世間はコロナ明けとともに店内飲食の需要が急回復。古川さんたちは再び店舗運営に追われることとなる。「冷凍揚げピザは急に爆発的に売れるものではないですし、店もコロナ前とはコンセプトが変わった部分もあり、集客の再考が必要でした」。
そんな中、2人は大阪産業創造館でWebサイトのアドバイスをしていた松崎さんと出会う。「個人店でありながらWebとECサイトをきっちり構築されており、こちらのアドバイスも即日実行される。この2人は本気だと感じました」と松崎さん。そのサポートを受けながら、客足が順調に回復すると、次なる課題が浮き彫りになった。
「夫婦2人だけの店なので、忙しくなればどうしても長時間労働になります。ありがたいことですが、これでは長く続けるのは難しい」理一さんは当時の危機感をそう語る。

営業時間を短縮しつつ収益の柱を作るために『冷凍揚げピザ』の本格的な事業化を決意。『令和7年度新事業展開テイクオフ支援』に申請し、伴走支援のパートナーには、引き続き松崎さんを指名した。「Webマーケティングの観点から、専門的なペルソナ論ではなく“この商品は、誰が、いつ食べるものなのか?”を明確にしていきました」と松崎さん。『冷凍揚げピザ』は事前注文のため、当日注文のデリバリー市場とはマッチしない。3人は、どんなメッセージで訴求すべきなのかを掘り下げた。揚げピザは、イタリアではおにぎり感覚の手軽なもの。家庭でのスポーツ観戦やホームパーティー、アウトドアなどのシーンを想像し、パッケージにも記載。ECサイトも再構築し、楽しい食卓のイメージや解凍方法など食べ方なども分かりやすいビジュアルで表現した。

「特定のツールを導入すれば売れる、という世界ではありません。ただ、お二人はビジョンが明確で、判断がとにかく早いため、プロジェクトは非常にスムーズでした」と語る松崎さん。
店名の「フォルトゥーナ(幸運)」にちなみ、今年1月には受験生向けの「運をアゲる」応援ピザBOXを販売。これが話題を呼び日経MJにも掲載された。例年クリスマスに偏りがちだった売上だが、2026年1月には12月を超える実績を記録。2月も順調に注文が入っているという。「今後も季節の行事やイベントに合わせた提案で、通年で事業を安定させていきたい」と麻衣さんの表情は明るい。
目標だった営業時間の短縮も実現しつつある。週休1日のランチ・ディナー営業から、段階的にランチを減らし、現在はディナー営業のみへとシフト。「まだランチを完全にやめるには売上が少し足りませんが、通販を伸ばしてカバーしていきたいですね」と語る麻衣さん。「僕たちは店を辞めたいわけじゃない。夫婦のペースで、長く続けることが一番大切なんです」。
事業が安定すれば、自分たちらしい働き方を選択できる。2人が目指すのは、そんな「健やかな成功」の形なのだろう。
ピッツァフォルトゥーナ
代表者:古川理一
所在地:大阪市都島区都島本通2-9-14
TEL:070-1819-6135 事業内容:飲食店事業、冷凍通販事業
webサイト:https://www.pizza-fortuna.jp/
株式会社流楽
代表者:松崎匡浩
webサイト:https://www.ryu-raku.co.jp/
『WORDS:3 -大阪で新事業展開に挑む人のことばを集めたインタビューと活動報告集-』
発行元 | 大阪府商工労働部中小企業支援室経営支援課
発行日 | 2026年3月10日
プロデュース | 枡谷郷史、足立哲、大内涼加、西尾和倫(大阪産業局)
企画・取材・記事・デザイン| 古島佑起(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)
プロジェクトマネジメント | 吉原芙美(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)

