
『DONTTO(ドント)』は直線的でミニマルなフォルムに畳の座面をもつユニークなデザインチェア。生み出したのは、堺で畳店を営む大江俊幸さんだ。本業の傍ら、これまでに畳を用いたアクセサリーやインテリアのブランドを立ち上げ、展示会やPOP-UPなど自らの手で販売してきた。「いくら技術力があっても、売る力がないと意味がないんです」。
そもそも畳は、和室など空間設計の段階で組み込まれなければ導入される機会は極めて少ない。後から入れるのは難しい商材だ。『DONTTO』は、半畳サイズの畳を家具として気軽に暮らしに取り入れることができる。「POP-UPでお客さんと話していると、一番聞かれるのが“畳の椅子ないの?”なんです」。大江さんは、家具としての畳のニーズに気づいた。「個人事業は目の前の仕事で手一杯。不慣れな補助金申請にも苦手意識がありました。しかし『DONTTO』を思いついた時、どうしても挑戦したくなったんです」。
支援機関として頼ったのは、以前から交流のあった堺商工会議所。月に一度の進捗確認と自身の苦手分野である書類チェックを依頼した。以前は「セミナーの案内役」というイメージだったがその印象はガラリと変わったという。
「何かあればまず相談しようって思うようになりましたね」。
一方で、あらゆる工程を人任せにしないのが大江さん流。申請時『DONTTO』は構想段階にも関わらず、設計・試作・写真撮影・HP制作費用はリサーチ済み。補助金の活用はほぼ予算計画通りに進んだ。「木工職人・デザイナー・カメラマンなど全部自分で依頼をし、指示出しもしました」。
デザインの経験はないが、作りたいビジョンが明確にあるのだという。8月に始動。10月にはプロダクト完成とHP・SNSを開設し、11月には東京の展示会出展と、爆速で駆け抜けた。「補助金をいただいた責任と同時に半分は身銭。“作って満足”はあり得ないです。早く世に出して回収しないと」。それは闇雲に売るのではなく、商品の価値を丁寧に伝えながらビジネスとして向き合う覚悟の表れだ。今春には京都のギフトショーや建築系展示会への出展も控えている。現在は問い合わせ受注のみだが、ECも視野に入れている。「畳が好きだからずっと職人でいたい。そのためにはいろんな方法で良さを伝えないと」。
伝統を次世代に繋ぐため、大江さんの革新は止まらない。
大江畳
代表者:大江俊幸
所在地:大阪府堺市堺区山本町2-65-26 TEL:72-221-4145
事業内容:畳の製造・施工、小売企画販売、プロデュースなど
webサイト:https://ooetatami.com/
『WORDS:3 -大阪で新事業展開に挑む人のことばを集めたインタビューと活動報告集-』
発行元 | 大阪府商工労働部中小企業支援室経営支援課
発行日 | 2026年3月10日
プロデュース | 枡谷郷史、足立哲、大内涼加、西尾和倫(大阪産業局)
企画・取材・記事・デザイン| 古島佑起(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)
プロジェクトマネジメント | 吉原芙美(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)

