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株式会社テキスタイル 植山 展行

植山グループは1948年の創業以来、兵庫県・北播磨地域の伝統産業である「播州織」の事業を手がけてきた。2020年にはグループ4社を合併し、製造を担う植山織物株式会社と、販売を担う株式会社植山テキスタイルとして再編。この新体制のもと、同社が『令和7年度新事業展開テイクオフ支援』の補助金を活用して挑んだのが、クラウド型営業支援ツール『QR商談支援システム』の開発だ。
商談では複数の生地サンプルを用いるが、それぞれの詳細な商品情報や正確な在庫状況の確認には、その都度PCから基幹システムへアクセスするなど手間と時間がかかりスムーズではなかった。さらに、商談後に選ばれたサンプル情報を手動で入力して手配を行うなど、アナログな工程による非効率さと、常に変動する在庫状況の把握にタイムラグが生じることが大きな課題だった。
そこで前職でバックオフィス業務の改善に携わっていた植山さんは、自身の知見を活かし、生地サンプルの情報をクラウド上で一元管理するアプリの開発に乗り出した。 生地サンプルに付けられたQRコードを読み込むことで、リアルタイムの在庫状況だけでなく、商品情報の表示、サンプル手配までがシームレスに完結する。また、名刺読み取りアプリのデータを読み込むことで、リクエストされたサンプルと顧客情報の紐付けまで行うことが可能だ。

QR商談支援システムのインターフェース

植山さんが家業の4代目を継いだのは、弱冠25歳の時。先代である父の急逝がきっかけだった。
「当時、グループ全体で売上30億円、従業員数100名。4つのグループ企業が個々に生地在庫を持っており、膨大な無駄が生じていました。税理士・会計士もバラバラだったんです」
従業員は全員が年上。そんな中で植山さんを悩ませたのは、ベテラン社員に色濃く残るバブル時代の金銭感覚だった。
「赤字の状態なのに、今では考えられないような不明瞭な経費や仕入が山のようにありました」。
一方で、確かな顧客がいて売上もある。無駄なコストを徹底して削り、経営を適正化すれば黒字化は容易に想像できた。
植山さんはまず2013年に、点在していた5つの拠点を1つに集約。不良在庫の整理や収納ルールの徹底など、管理体制を再構築した。次いで2019年には会計士を変更し、経営体制を抜本的に刷新。
「極めて真っ当なことをしてきただけなんです。倉庫はきれいな方がいい。商品情報は分かりやすい方がいい。経費は無駄なく使う」。
古参社員の反対にあうこともあったが、一方で現状に違和感を覚える若手社員もおり、彼らの協力もあって会社は次第に健全化していった。15年という歳月をかけて土台を整えた植山さんは今、ようやく自分の思い描く「攻め」の経営ができるようになったという。

「在庫管理も経営体制の刷新も、いわば“守り”を固める作業でした。それが完了した今、ようやく営業を加速させるための施策が打てます」。
当面の目標は売上のトップラインを引き上げることだ。すでに認知を獲得している国内市場よりも、今後は海外展開に注力したいと語る。先代の頃から海外現地法人を設立するなど、グローバルビジネスに積極的だった同社。しかし、最大の壁は言語だった。
「今回開発したQR商談支援システムは英語表示が可能なので、海外での商談のスムーズさは格段に向上するはずです」。
非常にシンプルなシステムであるため、将来的には同じ悩みを抱える同業者への提供も視野に入れている。

兵庫県・北播磨エリアにある植山グループの工場

さらに注力したいのは、自社資産の「コンテンツ化」だ。 新作生地の柄が、わずか2週間で安価な海外メーカーに模倣される現代。メーカーが持つストーリーや背景まで含めて発信し、情緒的な価値で選ばれる存在になることが重要だと植山さんは語る。
「自社にあるシャトル織機は、海外から視察に来られるほど希少なものです。例えば、新しいものや珍しいものを求めるクリエイターにウチの工場で撮影をしてもらうなど、コラボも積極的に進めていきたいですね」。
QR商談支援システムはクラウドベースなので、商品情報に画像や動画を紐付けることも容易だ。自社の魅力をコンテンツとして形にし、システム自体をメディアとして活用していく構想だ。
工場に眠る機械や4,000種を超える生地在庫、そして200年以上続く播州織の歴史。そのすべてが独自の価値であり、植山テキスタイルのファンをつくる強力なコンテンツになり得る。 「出血を止めるフェーズ」から「会社をメディアとして発信するフェーズ」へーー植山さんの次なる挑戦が始まっている。



うえやま・のぶゆき
大学卒業後、大手精密機器メーカーで金融機関向けの入出力関連のソリューション営業に従事。2011年、江戸時代から続く播州織産地の老舗企業を先代の急逝により、25歳で承継。その経営手腕が評価され、2020年にForbes JAPAN「ローカルヒーロー賞」を受賞。また植山グループは2023年3月、経済産業省「次代を担う繊維企業100選」にも選定されている。


株式会社植山テキスタイル
代表者:植山展行 
所在地:大阪府守口市大宮通4-1-16 TEL:06-6998-7333
事業内容:ファッション、アパレル関連製品の企画・製造・販売業 
webサイト:https://www.ueyama.net/


『WORDS:3 -大阪で新事業展開に挑む人のことばを集めたインタビューと活動報告集-』
発行元 | 大阪府商工労働部中小企業支援室経営支援課
発行日 | 2026年3月10日
プロデュース | 枡谷郷史、足立哲、大内涼加、西尾和倫(大阪産業局)
企画・取材・記事・デザイン| 古島佑起(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)
プロジェクトマネジメント | 吉原芙美(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)

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