世界の困りごとを
食で解決するアンディ社長の挑戦
中崎町の人気カレー店『Zipangu Curry Café』を営むアンディ社長こと安藤郁敏さん。
コロナ禍の店舗売上激減を機にレトルトカレーを商品化。自社ECから始まり小売・卸売と順調に販路は増え、さらに商品企画開発、販売戦略コンサルなど事業を拡大。ついに昨年の年間売上はコロナ期の4倍に届く勢いだ。 そんな中、テイクオフ支援を活用して生まれた新商品『濃厚幸えびガラの大阪和風出汁カレー』について聞いた。

INTERVIEW

株式会社ジパングフードリレーションズ
代表取締役
安藤 育敏
Ando Ikutoshi
お店クオリティのレトルトカレー
僕の人生のテーマが「困りごと解決」なんですよ。『濃厚幸えびガラの大阪和風出汁カレー(以下、えびガラ出汁カレー)』は、エビの陸上養殖事業者さんの相談から始まりました。エビの脱皮殻が産業廃棄物として年間数トン出て、しかも処分費用がかなり高額。再利用して出汁が取れないか試行錯誤されたそうですが、殻が固くてダメだったと。柔らかくして旨みを出す方法ならいくつか思い当たったので試してみた結果、苦労はしましたがものすごく濃厚なエビ殻出汁の抽出に成功したんです。それだけでもかなり美味しいですが、さらに僕たちオリジナルの鰹と羅臼昆布の大阪和風出汁を加えて、エビの香りと出汁の旨みを何倍にも引き出してできたのが『えびガラ出汁カレー』です。先日Youtubeの人気番組「令和の虎」に出演し、出資者の社長たちにもその味を絶賛していただきました。
実はコロナで店舗の売上が激減したことで本格的に着手したのがレトルトカレーの製造です。番組でも試食後「このカレー実はレトルトなんです」って言うと皆さん驚かれていましたが、逆にレトルトっぽさを感じる原因は何かと言うと増粘剤と保存料なんです。僕たちはそれらを一切使わず、代わりに一度に少量しかできない滅菌器を使い、カレーの仕込みも職人の手作り。手間はかかりますがお店のクオリティを再現できるオリジナルの『Zipangu製法』を開発し、商品化したレトルトカレーを2021年から自社ECで販売しました。2022年にはパートナーとなる仲卸業者さんと出会い、現在小売の取扱店舗は400店、飲食店などの卸先は60軒にのぼります。
社長ブランディングが企業ブランディング
小売・卸売はパッケージや売り方まで考えないといけないんですよね。例えば商品の特徴は製法にもありますが、全部書くと企業秘密がバレてしまう。素材は書くけど製法は詳しく書かないなど、興味を持っていただくためにどこまで言うか塩梅が難しいです。店ならいくらでもこだわりを説明できますが、納品先の店頭ではそうはいかない。どうやって商品の魅力を伝えていくか、その一つが社長ブランディングだと思います。トヨタの前社長豊田章男さんやカーネルサンダースなど、大手企業の社長や創業者が前に出ているのを見て、社長がストーリーを伝えることが大事だと思いました。つまり社長ブランディング=企業ブランディングだと。それで2019年に法人化したタイミングで僕は安藤育敏から「アンディ社長」になりました。PRの手法も学び、プレスリリースするときは「話題性・独自性・社会貢献性」などを盛り込んだ内容にするなど工夫を重ね、おかげさまでこれまでのメディア取材数は400本を突破しました。メディアに出て嬉しかったのは、スタッフの家族が安心してくれるようになったことです。「アンディ社長また出てたで、すごいね」って。スタッフの家族に信頼してもらうってある意味で一番難しい。それができたら社会に信用してもらうことはできるんじゃないかと思っています。「アンディ社長=出汁カレー」になるようにこれからも知ってもらえるようにしていきたいですね。
食で世界の困りごとを解決していく
お店で提供していた『牛すじ出汁カレー』がレトルト商品第1号なのですが、今回『えびガラ出汁カレー』を商品化できたことで、お店のメニュー以外も開発できることが証明できました。最近は全国から「ウチの食材を何とかしてほしい」と商品開発のご相談をいただいています。カレー以外では、沖縄のプロジェクトがあります。沖縄は今気温が下がっててバナナが熟れず、バナナ農園の収入が激減してるんです。そこで母乳に近いうまみ成分の昆布出汁と青バナナを合わせたポタージュや離乳食の試作をしています。
あと世界にいる20億人のイスラム教の方々が日本に来た時、利用できる飲食店が限られていることから『ハラールチキン出汁カレー』を開発しました。僕は日本のハラールカレー伝道師「アラビアンディ社長」として国内外にこのカレーを発信します。さらに並行して「グローバルジパング2025」と題した商品の海外展開も今年からスタートします。 ジパングフードリレーションズとしては今、飲食事業、小売・卸売事業、企画開発事業、コンサル事業の4つの柱がありますが、根っこは全部誰かの困りごと解決です。美味しいごはんは人を自然と笑顔にすることができる。そんな食の力でみんなの困りごとを解決していきたいですね。


株式会社ジパングフードリレーションズ
代表取締役|安藤 育敏
創 業|2019年
本社所在地|〒530-0015 大阪市北区中崎西3-3-4 34ビル1F
事 業 内 容 |飲食店の企画・経営・運営・管理、フランチャイズチェーン事業、食品卸販売および輸入事業ほか
WORDS:2 /大阪で新規事業に挑む人と支える人のことばを集めたインタビュー集
(令和6年度新事業展開テイクオフ支援事業活動報告書)
発行元 | 大阪府商工労働部中小企業支援室経営支援課
発行日 | 2025年3月11日
プロデュース | 枡谷郷史、足立哲、大内涼加(大阪産業局)
企画・取材・記事・CD・D | 古島佑起(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)
プロジェクトマネジメント | 吉原芙美(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)