新事業展開の事例

case
取り組み

オタクラウド

自身もオタク!
だからこそ分かる共感されるサービス

コスプレ衣装を作ってほしい依頼者と制作者をつなぐクラウドマッチングサービス『narikiri』をはじめ、オタク文化を愛する人たちの事業を手掛けてきた同社。
テイクオフ支援を活用して生まれた新規事業が、コスプレ衣装を自分で作ってみたい人のための型紙・生地販売サービス『narikiri material』だ。 自身もオタク文化の愛好者である代表の茶木さんに好きから生まれる事業作りについて聞いた。

INTERVIEW

株式会社オタクラウド 代表取締役

茶木 盛暢
Chaki Shigenobu

理想のタッグから生まれた新規事業

僕自身コスプレが好きでよくやっていたのですが、そもそもマンガ・アニメのキャラクターの造形と日本人の体型の相性が良くないんです。既製品の衣装やアイテムは数分間の着用なら良いのですが、イベントに参加したり撮影をしたり長時間になると身体に合わず痛くて辛いことが多かったんです。それで自分に合ったオーダーメイドの衣装制作サービスがあったら良いと思って、2017年に立ち上げたのが『narikiri』です。
僕自身がユーザーでもあるので、より良いサービスを求めてこれまでに1000回以上アップデートを重ねてきました。おかげさまで今は年間取引額が約4000万円と、いろいろな方に利用いただけるようになってきました。利用者の声を聞く中で早い段階から「作ってほしい人」と「作れる人」の間に「自分で作ってみたい人」がいることは分かっていたので、そのための素材販売のアイデアはありましたが、なかなかサービス化できずにいました。そんな中、服飾資材の卸業を営む「清原株式会社」さんからtoCビジネスのお誘いをいただいたことで生まれた新規事業が『narikiri material』です。マンガ・アニメのキャラクターのコスチュームにぴったりの型紙や生地をあらかじめ制作キットにパッケージングして販売します。僕たちはサービスとシステムの開発・運営を、清原さんは生地や素材の選定と在庫を担当していただきます。
僕たちは自前でシステムの構築はできますが、販売する素材は仕入れも在庫も負担が大きいので、清原さんとのタッグは「プラットフォーマーと原材料卸」の理想的なチームだと思います。

「やってみて分かる壁」を探しに行く

僕が作る事業は、まずオタクとして「自分がほしい」という熱量を大切にしています。オタクから見れば「ビジネスオタク」か「本物のオタク」かは一瞬で分かります。好きじゃない人が作ると深い部分での共感が弱いんです。 今もパタンナーさんが作った型紙でコスプレ衣装を自分で作っていますが、素人が人間の服を作るのってめちゃくちゃ難しいんです。『narikiri material』は作る楽しさを知ってもらうためのサービスですが、難易度が高すぎて「これだったら買うわ」となってしまいかねない。もっと型紙をシンプルにして、子供向け雑誌の付録くらいの難易度にしたいです。あるいは「推しぬい」という好きなキャラクターのぬいぐるみを愛でる文化があるのですが、ぬいぐるみの衣装用の商材から販売することで入口のハードルを下げるとか。探ると本当にまだまだあって、例えばコスプレは10〜30代がメインですが、タイパを意識する層に「衣装を作る時間を捻出してもらえるか?」という壁も見えてきました。少し年代を上げて40〜50代になると自分の時間ができて手芸をされる方がけっこういると聞き、手芸愛好者のオフ会にも参加しました。聞いてみると、この層はマンガ・アニメではなくテディベア用の服とかちょっとまた違った分野に深いファンがいることが分かったり……。僕はこういう「やってみて分かる壁」に出会うのが好きなんです。大変ですけど、サービスをより良くできるチャンスだと思うので。

「これが好きだ!」という熱量が共感に変わる

新規事業って上手くいくか分からないので、日々の生活がギリギリだと精神的にも厳しいと思います。僕も『narikiri』が軌道に乗るまでは業務委託でシステム構築の仕事をしていました。ただ、それが何のためか、目先のお金に流されないことが大事だと思っていて、例えばシステムの仕事だと最初の構築は安くやって保守で儲けるのが一般的なのですが、僕は保守は一切やらないと決めていました。やりたいのは自社事業なのに、保守で手を取られちゃったら本末転倒ですから。1本50〜100万円の仕事を3日間でやって、残り27日は『narikiri』に費やす生活をしていましたね。今もそれは変わってなくて、利益が出たら外車に乗るより、サービスのサーバーを増強したいです(笑)。そういう本当に好きでやっている熱量ってサービスの利用者さんにも届くと思うんですよね。 今後、中長期的にはオタク文化をつくるクリエイターさんの支援をやっていきたいです。テイクオフ支援などの力も借りながら、衣装に限らずゲーム・音楽・実店舗などオタクの皆さんから共感を得られる事業を幅広く展開していきたいですね。

コスプレオーダーメイドマッチングサービス『narikiri』
オタクラウド主催のクリエイター支援イベント

株式会社オタクラウド
代表取締役|茶木 盛暢
創   業|2017年
本社所在地|〒530-0001 大阪市北区梅田1-1-3 大阪駅前第3ビル
事 業 内 容 |ITを活用したマッチングプラットフォームの運営


WORDS:2 /大阪で新規事業に挑む人と支える人のことばを集めたインタビュー集
(令和6年度新事業展開テイクオフ支援事業活動報告書)

発行元 | 大阪府商工労働部中小企業支援室経営支援課
発行日 | 2025年3月11日
プロデュース | 枡谷郷史、足立哲、大内涼加(大阪産業局)
企画・取材・記事・CD・D | 古島佑起(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)
プロジェクトマネジメント | 吉原芙美(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)

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