2024.3.13

ダイシン工業

BtoC挑戦で感じた
新しいものづくりの可能性

オフィス用収納家具のBtoBメーカー・ダイシン工業。
新たにBtoCビジネスの可能性を感じ自社ブランド「TEKO DESIGN」を立ち上げた。
クラウドファンディングにて好評を博し、同ブランドから昨年11月に先行リリースされたのが、
スチール製の壁掛け収納製品『monocell』だ。
若手中心の製品開発と一風変わった今後の支援計画について聞いた。

INTERVIEW

事業者_
ダイシン工業株式会社
常務取締役

鶴見亮介
Tsurumi Ryosuke

支援機関_
摂津市商工会
経営指導員

白谷将規
Shiratani Syonori

信じた製品が喜ばれる、メーカーの醍醐味

鶴見：ダイシン工業の製品は、販売店さんに製品を提案しOKが出るとカタログを通じて世に出るものがほとんどです。ある時、自社製品の昇降デスクを使ってみるとすごく使い心地が良いにも関わらず、カタログ掲載がないため全く売れていませんでした。試しにAmazonのECで直販したところかなり売れたんです。これまでBtoBゆえに届かなかったエンドユーザーさんの声も聞けて、そこから改善した第2弾製品をリリースすることもできました。エンドユーザーさんとダイレクトにコミュニケーションを取りながらのものづくりがとても新鮮でしたね。製品を世に出す方法が他にもあったんだとBtoCビジネスの可能性を感じました。やはりメーカーなので、自分たちが良いと思う製品が喜ばれるのは嬉しいです。
そんなものづくりの醍醐味を若手社員にも味わってほしくて、新製品開発チームを発足しました。最初にダイシン工業の基幹技術である板金加工で作ること、クラウドファンディングを活用することの2つを決めました。板金加工にこだわるというのは、先ほどの昇降デスクの反省からです。最初は上手くいったのですが、コロナで需要が伸び大手さんが参入すると市場価格はみるみる下落。昇降デスクは、協
力先から仕入れたパーツが多かったので、製品改善の自由度や価格競争力の部分で勝てなくなり、撤退せざるをえなくなりました。だから次の製品は、自分たちの一番得意なことで勝負すると決めたんです。

言い合えるチームだからこそ製品が磨かれる

鶴見：クラファンは、ちょうどその頃摂津ビジネスサポートセンターの方が講師をされていたクラファンセミナーに参加したことが大きいです。クラファンを使った製品開発に長けた方ですぐにコンサル契約を結びました。「テイクオフ」もその方に教えていただいたんです。実務としては、製品開発会議のファシリテーションなどしていただきました。
僕の意見に引っ張られないよう、製品のアイデアは僕以外のメンバーに持ち寄ってもらいました。会議はみんなが積極的に発言するという雰囲気ではないのですが、一人ひとりの顔を見ていると何か言いたそうなんです（笑）。聞いてみると「じゃあ言わせてもらいますけど…」ってけっこう辛辣な意見が出る。和気藹々ではなかったですが、その甲斐あって全員が納得いくところまで製品をブラッシュアップ
できたと思います。ものが言い合えるチームができたのは財産ですね。クラファンも初日はドキドキしてPCに張りついていましたが、最終的に240万円近いご支援をいただいて無事達成し、手応えを感じられました。

商工会ならではの商工会らしくない支援

白谷：先ほどの摂津ビジネスサポートセンターの方のご紹介で私がダイシン工業さんの支援担当となりました。ですが、これまで製品開発会議に1度参加したのとSNSの発信くらいで、支援らしいことはほぼできていません。というのも、私は商品ができた後の支援が得意なんです。端的に言うと企業コラボですね。先日は航空会社のJALさんに『monocell』を使ったご提案に行きました。マイルと交換できる「とっておきの逸品」というJALセレクトの商品サイトがあるのですが、そこで取り扱いの確約をいただきました。他にも宝島社さんの雑誌「MonoMax」への掲載や同じ大阪の有名フィギュアメーカー海洋堂さんとのコラボなども企画中です。商工会ならではの人と企業のつながりを活かして、商工会らしくない企業コラボや企画提案支援をやっていきたいですね。双方に喜んでもらえるアイデアさえあれば、企業の規模は関係ないと思っていて、良い企画が浮かべばどこへでも提案に伺います（笑）。

鶴見：僕たちが全くできない部分をご支援いただけるので、本当に心強いです。現代の賃貸というライフスタイルにおいて『monocell』のようなスチール製壁掛け収納には可能性があると感じました。今は量産の準備を進めており、4月中旬には自社のECや楽天などのモールECで販売予定です。今後もインテリアなどの分野でBtoC向けの自社製品を広めていきたいです。もちろんBtoB事業と比較すると大きな柱になるには時間がかかるかもしれません。ですが、ものづくりメーカーとしてのやりがいを感じながら大切に育てていきたいですね。