2024.3.13

ジパング

小売＋メーカー業、
犬を売らないペットショップの新しい挑戦

今年でオープン30周年を迎えるジパングは“ペットを売らないペットショップ”として
生体販売に頼らないビジネスの形を模索してきた。
今回取り組むのは、初の自社商品となる完全手作りの犬用フレッシュフード『GOHAN』だ。
材料は国産素材のみ、個別のアレルギー対応も可。
なぜペットショップが犬用フードのメーカーを目指すのかを聞いた。

INTERVIEW

事業者_
株式会社ジパング
代表取締役

吉田洋行
Yoshida Hiroyuki

支援機関_
尼崎信用金庫
住之江支店支店長

島津和弘
Shimazu Kazuhiro

今の時代だからこそできるフレッシュフード

吉田：犬や猫を売る生体販売の現状に疑問を感じて、そこに頼らないビジネスの形を試行錯誤してきました。幸いウチは粉浜の人たちの地域性もあってお客さんとの距離がすごく近くて、みなさん日常的にお店に来てくださるんです。トリミングによく来るので、迷子になったお客さんのワンちゃんが自分の家ではなくウチの店に来たりしたこともありました。
とはいえ物販だけでは厳しいので、今回完全手作りの犬用フレッシュフードを開発しました。実はこれずっと前からやりたくて。犬って元はオオカミから来てるので、本来肉食です。僕らの作っているフードは犬の体を考えた時の理想のごはんなんです。それなのになぜ今までできなかったかというと、一番は価格の問題です。国産素材の手作りフレッシュフードは、従来品のドッグフードとは比較にならない値段になります。20年前なら「犬になんでそんな良いものを…」と笑われたと思います。しかし、ドッグフードに使う小麦粉が原因でワンちゃんのアレルギーが増え、それに伴ってドッグフードも進化し価格も多様化しました。飼う人の知識や犬にかける費用も上がり、ようやく僕らがやりたかった商品も買ってもらえる時代になりました。

ハイスキルな副業人材が支援してくれる

島津：あましんでは進捗管理を含めた支援をさせていただきましたが、中でも副業人材のご紹介がお役に立てたのではないかと思います。今回で言えば外資系大手マーケティング企業にお勤めの副業人材の方がプロジェクトに入り、コンセプト策定や様々なアドバイスをくださいました。日頃、中小企業さんとなかなか接点を持つ機会のないハイスキルな方に安価にご支援いただけるのが魅力です。

吉田：副業人材の方と協議する中で自分の考えはほぼ間違いではないと確認できましたが、1つズレていたのが商品の一番のウリの部分です。僕は当初「国産素材」をメインに考えていましたが、副業人材の方に「アレルギー対応」で行ったほうがいいとアドバイスいただいて。レポートやデータに基づいてなぜそっちなのかをきちんと説明していただき納得しました。実際店舗に来られるお客さんの悩みの大部分がワンちゃんのアレルギーなので、この方向転換は本当に良かったですね。最初は他社の工場を見学しOEMも検討していましたが、「アレルギー対応」というコンセプトが定まったことで、細やかな食材の対応やカスタマイズができる自社手作りにしました。店舗リニューアルの際には、食の安心を意識したこだわりのオープンキッチンも併設しました。
副業人材の方のスピード感もあり、ひと月ほどで店頭での商品サンプル配布ができました。ダメ出しをいただくのが目的だったのですが、皆さん「早く売ってほしい」って（笑）。
価格は180g・1000円。店頭販売では月500食を目標にしていますが、メインは自社ECサイトでの販売です。サブスク型で今は契約プランや価格の最終調整に入っています。※

ネットワークこそ信用金庫の強み

吉田：あましんさんとのお付き合いは10年くらいになります。いつもは融資や事業展望のご相談ですが、今回のペースメーカー的な伴走と外部の専門家を必要に応じてマッチングしてもらえたのは新規事業をやる上ですごくありがたかったです。

島津：実はネットワークって金融機関のすごく大きな強みだと思います。あましんも200名ほどの営業が日々様々な企業さんのお話を聞いているので、その中には売り手買い手の関係性やビジネスパートナーになれそうな方々がたくさんいます。信用金庫ならではの様々なネットワークをぜひ活用していただきたいですし、私たちも人をつなぐことで中小企業さんの活性化につながればと思っています。

吉田：2月中には『GOHAN』も本格販売。この先軌道に乗れば規格外の食材や害獣指定されているジビエ系のお肉を使った商品開発もしていきたいです。小売に加え『GOHAN』という自社商品のメーカーになったことで、今後のビジネスの選択肢が増えると嬉しいですね。何よりまずは『GOHAN』を皆さんにほしいと言ってもらえる商品にしていきたいです。

※取材当時の情報です。