新事業展開の事例

case
業種
取り組み

三恵メリヤス

「最高」を突き詰める
アパレルメーカーが生んだ洗濯石鹸

素材・技術ともに最高のものを詰め込んだTシャツブランド『EIJI』を運営する三恵メリヤス。
支援機関の坂本さんは『EIJI』の立ち上げからクリエイティブディレクションに携わり、二人三脚でブランドを育ててきたパートナーだ。
今回挑戦したのは、良いものを長く着るための洗濯石鹸『SANKEI SOAP』の開発。
いちアパレルメーカーが洗濯石鹸の開発をするに至った経緯を聞いた。

INTERVIEW

事業者_
三恵メリヤス株式会社
専務取締役


三木 健
Miki Ken

支援機関_
株式会社サイバーポート
代表取締役


坂本 直樹
Sakamoto Naoki

「町工場のプレゼン」になる最高のTシャツを

三木:『SANKEI SOAP』開発のきっかけは、『EIJI』というTシャツブランドの立ち上げまで話が遡ります。90年代のアメカジブームの頃、それまでウチが愚直に守ってきた「丸胴」の技術がヴィンテージものの縫製を再現できると脚光を浴び、技術力のメーカーとして業界内知名度を高めてきました。ブランドさんの難しいオーダーに応えるたびに技術は進化。2014年に僕が家業に戻った時、素人ながらその技術に感動しましたが、一般の人は誰も知らないという状況でした。そこでウチの工場でできる最高のTシャツを作ろうと思ったんです。
服作りは、糸・生地・縫製・染色が分業制ですが、その頃パートナーの工場が次々と廃業している現実も目の当たりにし、かなりショックを受けました。これはウチだけじゃなく、各工場が最高の仕事をしたTシャツブランドにするべきだ。それができれば町工場のプレゼンにもなると考えました。大阪府の助成金事業の力も借り、1年半かけて素材と縫製を試し尽くした結果、自信をもって「最高」と言えるTシャツ『EIJI』ができました。2017年のことです。
僕はものづくりをする時、例えば着心地で言うと「気持ちいいかどうか」とか感覚的なところで判断しちゃうんです。それは技術の素人だというのもありますが、プロ目線の「良さ」ってプロしか分からないような誤差だったりするんですよ。でも一般のお客さんは、はっきりと分かる違いがないとお金は出さないと思うんです。着た瞬間に分かる気持ちよさ。思わずニヤッとしてしまうところまで妥協なくやります。

本当に作りたいものに寄り添う支援

坂本:そばで見ていると三木さんはプロダクトを通じてUX(ユーザー体験)を作っていると感じます。それはお客さん目線というより、いい意味で三木さん自身が本当にほしいものを突き詰める作業でもあると思います。
『SANKEI SOAP』で言えば、『EIJI』が抱えてきた「着心地の経年劣化」という問題をなんとかしたいという思いがスタートでした。洗濯とともにコットンの油分が抜け、数年で肌触りがカサついてしまう。それがある時、京都の染め屋さんとコラボ企画でカサカサの『EIJI』を染め直したら、着心地が新品のように回復したんです。二人して「戻った!」って驚いて。洗濯石鹸という発想はそこからですよね。

三木:そうそう。「油分を戻す洗濯石鹸」という発想で。作ろうとした時にちょうど「テイクオフ」の募集があり、採択いただいたことで実現性が高まりました。
『SANKEI SOAP』について、洗剤ではなくあえて石鹸と言うのは、僕が不純物恐怖症だからで(笑)。洗剤を作るならなるべく余計なものが入っていない植物由来の純石鹸で作りたかったんです。石鹸工場を数件回り「できますよ」と答えてくれたのが木村石鹸さん。実際には洗濯石鹸で繊維に油分を戻すのは難しいので油分が抜けにくいものになりましたが、アルカリ度をなるべく薄めて極力低刺激にする
など、本当に細やかに調整いただいて。結果、良い服を長く着るための洗濯石鹸として最高のものができました。

商品を通して同じ価値観の人と出会いたい

坂本:三恵メリヤスさんの服作りは本当に素晴らしいので、僕たちはパッケージデザインやブランドをどう認知してもらうかなどのクリエイティブ支援をしています。一番時間をかけるのはブレストです。世の中でこのブランド・商品はどういう存在でありたいのか。在り方を一緒に描いていくイメージです。『SANKEI SOAP』は、『EIJI』専用の洗濯石鹸というところから、次第に服を大事にしているすべての人に贈る洗濯石鹸というふうに在り方が見えてきました。服を大切にしている人なら一般のお客さんだけでなく『EIJI』の競合商品を作っているメーカーさんにも『SANKEI SOAP』を取り扱っていただきたいと思っています。コラボでもそのブランドさんのOEMでも構いません。

三木:大切な服って誰でも長く着たいじゃないですか。そういう価値観の人と『SANKEI SOAP』を通じてもっと出会いたいと思っています。僕の作るものは僕の好みの分身みたいなものなので『SANKEI SOAP』を気に入ってくれる人はきっと『EIJI』のことも気に入ってくれると思うんです。
そうやって知ってくれる人が増えると嬉しいですね。

SANKEI SOAP
EIJI

三恵メリヤス株式会社
代表取締役|三木 得生
創   業|1926年
本社所在地|〒530-0015 大阪市北区中崎西2-3-28
      TEL:06-6371-0498
事業内容|メリヤス生地を使ったTシャツやスウェット等の製造販売


WORDS /大阪で新規事業に挑む人と支える人のことばを集めたインタビュー集
(令和5年度新事業展開テイクオフ支援事業活動報告書)

発行元 | 大阪府商工労働部中小企業支援室経営支援課
発行日 | 2024年3月5日
プロデュース | 枡谷郷史、足立哲、遠藤麻子(大阪産業局)
企画・取材・記事・CD・D | 古島佑起(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)
プロジェクトマネジメント | 吉原芙美(クリエイティブ相談所 ことばとデザイン)

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