新事業展開の事例

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業種
取り組み

フライパンジュウ/藤田金属株式会社 藤田盛一郎

自ら発案したフライパンのカスタマイズサービス『フライパン物語』の成功を原資に、藤田金属株式会社の4代目藤田社長が挑んだのは、クリエイティブユニット・TENTとの協働でした。
2018年に発売した『フライパンジュウ』は、累計3万個の大ヒットを記録し、2021年には世界3大デザイン賞のうち、レッド・ドット・デザイン賞、IFデザイン賞の2冠を達成。
今や数々の大手企業とコラボプロジェクトを行うなど、波に乗る藤田金属。そのきっかけとなった『フライパンジュウ』はどうやって世の中に広まったのか、藤田社長にお話しいただきました。

中小企業が組むべきデザイナー

TENTさんとコラボのきっかけは、平安伸銅工業の竹内社長に「騙されたと思って組んでみて!」とゴリ押しされたことです(笑)。デザイナーさんと組みたい気持ちは前からありましたが費用がネックで踏ん切りがつかなかった。TENTさんの見積は現実的な額で、正直に言うと最初は失敗してもいいかくらいの気持ちで始めました。
僕は商品コンセプトやコンテンツは全部デザイナーさんに任せます。僕がTENTさんにオーダーしたのは、「取っ手を着脱できる鉄フライパン」ということだけ。それで出てきたのが鉄のお皿で「いや、お皿頼んでないですよ」って言ったら、3Dプリンタで作った取っ手が出てきて「これをつけたらお皿がフライパンになるんです」と言われた瞬間に、やると即決しました。「“つくる”と“たべる”を1つにする」という発想に驚きましたね。フライパンで調理してそのまま食べるっていうズボラな行為が、これは取っ手を外すだけで完全にお皿になって、ズボラさなんか微塵もない。これがデザイナーの力なんやって。
もう1つTENTさんと組んで良かったことは「発信力と販路」です。デザイナーさんもメーカーも発信力や販路がなくて、売れないというのはよくあるパターンです。僕が思う、中小ものづくり企業が組むべきデザイナーさんは、デザインだけじゃなく販路にも強い人ですね。どこに商品を置いてもらうかもTENTさんの販路を提供してもらいましたし、『フライパンジュウ』のユーザーテストの協力者100名もTENTさんが集めてくれました。発信もそう。かかったPR費用は外部にプレスリリースを1回出した3万円のみです。それで国内から海外までいろんなメディアの取材やお引き合いが来ました。

実践の中で蓄積される知見

ウチが商品を世に出すメインは展示会です。僕も過去いろんな展示会に出てみましたが、今は大きい展示会はウチの客層に合うもの1つだけに絞っています。ブースは大きく出したほうが絶対にいいですね。最初は3×3mでしたが、今年は3×12m。大きくするごとに数も客層も格段に広がるんです。その出会いがめちゃくちゃ大きいですね。たくさんある中で埋もれないようにするには、ある程度商品絞って、デカいブースでドカンと出すのが強いと思います。逆に小さいブースでいろいろ置くのが一番良くないですよね。印象に残れば、この投資はすぐに回収できると思います。

あともう1つ、埋もれにくくて意外と狙い目なのは小規模の展示会です。BtoBからBtoCに転換するなら、たぶん「ててて商談会」が一番でしょうね。自分たちに合う展示会を探してみることですが、見るのと出るのでは全く違うので断然出た方が得るものは多いです。
小規模の話は売り先も同じで、例えば大きい量販店さんの全国50店舗に置くよりも、全国の小規模店50店舗に置くほうが売れるし、利益も出ると思います。まず掛け率が違う。大手さんに直接口座開くのは難しいので、結局商社さん経由。すると掛け率は4掛け、でもお店と直取引なら6掛けで出せる。ウチもそれで利益率はかなり良くなりました。
『フライパンジュウ』の売れ行きは最初から好調でしたが、スタッフは半年くらい誰も手伝ってくれませんでした。検品・梱包・出荷全部僕一人です。それが徐々に変わってきて、今年の展示会はスタッフ全員日替わりで接客しました。接客に慣れていないスタッフでも、いつの間にか自分から進んで説明し出すんです。実際に作ってるから何聞かれても答えられる、反応もらえるのが嬉しいし、だんだん自信もついて。だいぶスタッフの意識や会社の雰囲気も変わりましたね。

続々と決まる大手とのコラボ

最近電通のフェムテックチームと組んだフライパン『元気じゃない日の、フライパン』が出ました。「女性に向けて鉄分補給ができてしかも軽いフライパンを作りませんか」という電通さんの持ち込み企画です。電通さんはフェムテック商品の実例を作りたい思いがあって、コンセプト・コンテンツ・PR全てやってくれて、ウチは商品開発して自社の名前で販売する。ウチは売れた分のロイヤリティを支払うだけ。商品開発の理想形ですね。
あとは、アーバンリサーチさんから「キャンプ用に『フライパンジュウ』を持ち運ぶ袋を作りたい」と声がかかって、「フライパンジュウ × アーバンリサーチ」のフライパン袋が出ます。これおもしろいのが袋の横で『フライパンジュウ』も一緒に売りたいから何かアーバンリサーチだけのオリジナリティが出せないかと相談されて。ちょうどその頃、ウチにスポーツメーカーのミズノさんが来られて、その場で『フライパンジュウ』の取っ手をバットの廃材で100本限定で作るというプロジェクトが始まったんです。「これアーバンリサーチさんと合わせたら、めちゃめちゃおもろいな」と思ってすぐつないで。3社コラボが実現して11月頃から先行販売します。
コラボを受ける基準は、おもしろいかどうかです。迷ったら基本やらないですが、おもしろいと感じたらほぼ即決です。今まだ言えないものも含めてこういうお引き合いは相当増えました。『フライパンジュウ』を作る前は想像できなかったです。ここ3年で大きく変わりましたね。

新規事業は「やり始め続けること」

「やり始め続ける」ことですかね。新しいことって本当は極力やりたくないです。ずっと売上保てて、利益出るんだったらいいじゃないですか。でも先のことを考えたらやらざるを得ないからやり続ける。先、先を考えて「やり始め続ける」ことが重要だと思います。あとこれをどれだけやらんとアカンのやろうと思うこともあります。でもやり始め続けているといろんなお引き合いにもつながって、だんだん会社の見え方も変わってきます。例えばウチの求人はものすごく変わりました。前まではザ・町工場なんで、求人に来るのは65歳以上。それが今2、30代の人しか来ないです。求人出さなくてもSNSでも問い合わせが来ます。ウチはまだ年商で3億5千万くらいの規模ですけど、数字の面でも会社が変化してきて、みんなが楽しく働けるようになってきています。それがまた商品の品質につながっていくように、僕自身もやり始め続けていきたいですね。

新規事業を始める方へ。「主体性を持ちながら、誰と組むか」

アドバイスないですよ(笑)。でも…「誰と組むか」かな。僕はTENTさんとだからここまで来れました。あれだけ親身になってくれたから『フライパンジュウ』も完成しました。諦めかけた時も、お互い支えあって対話し続けて。
あと作って終わりじゃなくて売るところまで一緒にできるかどうか。でないと販路もないし、掛け率や値段の付け方も分からない。卸しも店頭にも並ばないような値付けしてるとそこで止まります。親身になってくれてノウハウのある人と組むことですね。
勘違いしてはいけないのが、お金払って丸投げではダメだということです。自分たちが事業の主体者として、どこは任せて、どこは自分たちでやるか。できることだけじゃなくて、知らないこともやりながら学ぶことが大切です。良い人と組んでも失敗するリスクは常にあります。でもやらないと始まらないので、もし失敗してもそれを教訓にまた新たに始める。やっぱり始め続けることですかね。


ふじた・せいいちろう
1980年生まれ。大阪でフライパンや鍋の製造を行う老舗メーカー・藤田金属を経営する家に生まれる。2003年、大学卒業と同時に家業を継ぐべく藤田金属に入社。営業と開発を担当し、顧客のリクエストに応じてカスタマイズする『フライパン物語』、クリエイティブユニット・TENTとのコラボレーションで生まれた『フライパンジュウ』など、オリジナリティあふれる商品を世に送り出している。


藤田金属株式会社
代表取締役:藤田盛一郎
創業:1951年4月1日
本社所在地:〒581-0035 大阪府八尾市西弓削3丁目8
TEL:072-949-3221
事業内容:アルミニウム・スチール製家庭用品・家庭金物製造販売業

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