本記事は、昨年度までに実施した【新事業展開テイクオフ支援事業】の伴走支援に参加いただいた事業者さまを取材したものです。伴走支援期間を経た現在の状況や、これからの展望についてお話を伺っていきます。
働きたいけど、子育てと両立できるか不安……。そんなお悩みを持つママと、人手不足に悩む企業をユニークな企画でマッチングする新規事業をスタートさせたのが、株式会社マミー・クリスタルです。令和6年度の新事業展開テイクオフ支援事業を活用して土台を作った事業は今、いよいよ本格展開へと踏み出そうとしています。詳しいお話を代表取締役社長の新田さんにお伺いしました。

テイクオフ支援での土台作り
マミー・クリスタルは2011年、子連れで習い事ができるママサークルとして出発しました。2019年に法人化し、現在はママ・パパのための地域コミュニティ『マミクリ』を運営。LINEの登録者数は2万人を超えています。
『マミクリ』の運営のほか、ファミリー層をターゲットにしたイベント企画や子育て層の声を生かすマーケティング支援を中心に手がけている同社。これまでのノウハウを生かして新規事業として立ち上げたのが、子育て中の女性と企業をつなぐ就労支援事業『マミジョブ』です。
「『マミジョブ』の主なメニューは、働きたいママと企業が気軽に話せる交流会と企業見学ツアーです。もともとは大阪府堺市の女性の就職応援プロジェクトの1つとしてスタートしました。事業を手がけるうちに、堺市以外にもこの事業モデルを広げていきたいという思いが強くなったんです。2024年に有料職業紹介事業の許可を受け、その後、事業の土台作りのためにテイクオフ支援に申し込んだという流れです」
テイクオフ支援では、コンサルタントによる伴走支援とテレマーケティングを実施。テレマーケティングで自治体にヒアリングしたところ、約8割が『マミジョブ』の事業に興味があると答えました。
「興味があると言ってくださった自治体には資料をお送りして、そこからアポイントにつながったところもいくつかありました。そこで得た反応やヒアリングした内容を生かして、事業を作り上げています。コンサルタントの方の紹介で、自治体の検討会に有識者として招いていただいたこともありますし、テイクオフ支援から得たものは大きいですね」
成果を積み重ねた2年間
支援終了から2年、今では堺市に加えて大阪府豊中市、門真市、兵庫県神戸市、北海道北広島市の計5都市で女性の就労支援事業を展開するまでに成長しました。
「交流会は人気コンテンツになっていて、北広島市では猛吹雪の日にもかかわらず、14名の方が参加してくださいました。子育て中は忙しくて、働くことについて考える時間があまりないと思うんです。私たちの交流会は託児付きなので、別室で保育スタッフが託児をしている間に、じっくり話をすることができます」
これまでの事業で培ったノウハウを活用し、自治体が抱える悩みに合わせて最適な施策を提案できる点も『マミジョブ』の特色です。
神戸市のケースでは、働きたい子育て女性をサポートする施設「あすてっぷKOBE」の知名度向上を目的に、子育てイベントを開催しました。
「『あすてっぷKOBE』はとても良い施設なんですが、まだ知らない人も多くて。そこで、まずは子育てイベントを開催して、施設のことを知ってもらう機会にしましょうと提案しました。潜在求職者といわれる、働く意思はあっても働けないママたちが行くのは、就活イベントではなく子育てイベントなんです。結果として、約60名の利用登録につながりました。ほかの人材会社では巡り合えない人たちを集めることができるのが、私たちの強みですね」
そのほか、門真市では実証事業として2社と交流会と企業見学ツアーを行った結果、1名が採用決定、1名が面接に進んだそう。
さらに、企業からの依頼も届くようになりました。
「ある企業で交流会と企業見学ツアーのセットを実施したのですが、見学したその日に面接が決まり、数日後には採用が決まったんですよ。彼女はまだ子どもが小さくて、働くのはもう少し先だと思っていたそうなんですが、会社側が『ぜひ働いてほしい』とおっしゃったんです。まずは週1からでスタートすることになり、現在週4勤務されています。」

自治体、企業ともに高い成果を挙げている『マミジョブ』。その理由は「相性ベースでマッチしているから」だと新田さんは話します。
「以前、『マミクリ』のLINE登録者にアンケートを取ったことがあるんですが、ママが働く上で重視する項目は給与よりも仕事と家庭が両立できるかなんですよ。両立のためには、会社の雰囲気や人間関係が大事ですが、残念ながら求人誌の情報ではわかりにくいですよね。だったら現場を見てお話しして、相性が良さそうだと感じるところに勤めてもらうのがいいと思うんです」
さらに、面接ではつい聞くのをためらってしまう労働条件や福利厚生について相談しやすいのも『マミジョブ』の良さだといいます。
「ある企業を前向きに検討していたママがいらっしゃったのですが、駅から遠く、通勤が送迎バスだったんですね。それだと勤務時間中に保育園から『急な発熱なので迎えに来てください』と言われたときに、どうやって帰ればいいかわからない。そこが不安で一歩踏み出せないというお話を聞いて、社長さんにお伝えしたら、急遽帰らないといけなくなったときは会社がタクシー代を負担する新制度を作ってくださったんですよ。私たちが間に入って橋渡しをすることで、問題解消につながるケースもあります」
手がける自治体や企業が増えた分、売り上げも上昇。社員への還元につながっています。
「今年度の売り上げは前年の約1.5倍になりました。利益が出た分、社員の給料もアップしています」
『マミジョブ』から世の中を変える

自治体や企業へのアプローチに加えて、この春からはいよいよママへのアプローチを開始する予定です。
「『マミクリ』のLINEとは別に『マミジョブ』のLINEを立ち上げます」
LINEを始めるきっかけの1つは、『マミクリ』に関わったママからの入社希望が後を絶たないことでした。しかし、全員を雇用するわけにはいきません。そこで新田さんは「雇えないなら、世の中にある子育てに理解のある会社とつないでいこう」と考えました。
LINEでは、企業との交流会や見学ツアーのほか、働くかどうか迷っているママの背中を後押しするイベント「マミジョブ相談会」の情報を配信。登録者と子育てに理解のある会社とのマッチングを目指します。
さらに、これから女性を積極的に採用していきたいと考えている企業をサポートするアイデアも実現したいと新田さんは話します。
「女性を採用したいと思っても、実際に何をしたらいいのかわからない企業は少なくありません。ついありきたりな求人票になってしまって、募集をかけたのに誰も来ないというケースも多いので、ママによる求人票のブラッシュアップ会をやってみたいですね。会社は当たり前だと思っていることが、実はママにとっては魅力だったりするので」
女性活躍と人材不足解消を同時に実現する『マミジョブ』の挑戦が今、本格的に始まろうとしています。
「世の中を変えようと思ったら、『マミー・クリスタル』だけがいい会社になるのではいけないと思っています。私たちだけが頑張るんじゃなくて、将来的には子育てに理解のある会社を増やすことで、子育て中の人も働きやすい社会にしたいですね」
取材後記
昨今、共働き家庭が増加しているとはいえ、まだまだ子育て女性が働きやすい社会になったとはいえません。新田さんも「自治体や企業には、大事なのは制度より風土ということをお伝えしています。育休や生理休暇があっても、取得しづらい風土では意味がないですよね」と話します。
性別関係なく、働きたい人が生き生きと仕事に打ち込める社会を目指して、『マミジョブ』が本格始動する意義は大きいと感じました。
「For Mom’s Smile.〜より良い世界のために、まずはママを笑顔に〜」の理念を体現し続けるマミー・クリスタルの挑戦を心から応援しています。
株式会社マミー・クリスタルwebサイト:https://mommy-c.co.jp/
株式会社マミー・クリスタル
代表取締役|新田 昌恵
創 業|2019年
本社所在地|〒566-0011 大阪府摂津市千里丘東4-1-26
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取材・記事|ヤグチサトコ

