本記事は、昨年度までに実施した【新事業展開テイクオフ支援事業】の伴走支援に参加いただいた事業者さまを取材したものです。伴走支援期間を経た現在の状況や、これからの展望についてお話を伺っていきます。
関西一”キカクガイ”なサウナ工務店として注目を集めている、摂津市の株式会社花岡工務店。実は、サウナ事業のスタートを後押ししたのは、新事業展開テイクオフ支援事業でした。事業3年目に入った今期は注文が殺到し、昨年の2倍以上の販売を見込んでいます。事業成功の秘密から摂津市全体を盛り上げる大きなプロジェクトのお話まで、代表取締役の花岡さん、マネージャーの山中さん、サウナ営業担当の乾さんが語ってくださいました。

サウナ事業を始めるきっかけ
2023年の秋。リフォームを担当していた住宅で、他社がサウナを施工しているのを見た山中さんは、「自分たちで造れないか?」とひらめきます。山中さんの提案を受け、サウナが設置されている施設を視察した花岡さんは、製造可能と判断。2024年から本格的に取り組もうと計画していたところ、年明け早々にサウナの問い合わせが偶然舞い込み、幸先の良いスタートを切りました。

花岡「当時は安価な海外産の組み立てキット式のサウナが主流でしたが、花岡工務店の『摂津サウナ』は大工職人が一から造るオーダーメイド。やはり質が違います。今は海外産のサウナの輸入が難しいようで、輸入業者からサウナを販売させてくれないかと言われるほどです」
山中さんは新事業を始めるにあたり、補助金活用を検討。一番最初に見つけた補助金が、テイクオフ支援だったといいます。
山中「僕たちの挑戦を応援していただける補助金だと感じ、申請しました。補助金は広告宣伝費とヒーターの購入に充てました。サウナのヒーターって高額なんですよ。先行投資で買って元が取れるのかというのがネックだったんですが、補助していただいたおかげで事業開始のハードルが下がりましたね」
花岡「テイクオフ支援のおかげで、事業が勢いづいた部分はあると思いますね。広告やイベントの効果か、この2年でサウナ工務店としての認知度がかなり上がりました。今は、日本一の製造部隊を目指していますし、実現できると思っていますよ」
職人スキルと「異色」の2人が起こした化学反応
『摂津サウナ』の強みは、リフォームで培った大工職人の技術力。既製品ではなく受注生産で造り上げるため、マンションの一室に造る1人用のサウナから宿泊施設の大型サウナ、さらにはカーサウナまで、幅広い形に対応可能です。


初年度は13台を売り上げ、3期目の2026年は2月現在、初年度の3倍近い販売ペースで推移しています。さらに関西だけでなく、全国から依頼が届くようになりました。
成長の秘密は、元々持っていた製造スキルに、山中さんと乾さんという異色の経歴を持つ2人のスキルがかけ合わさったことでした。
乾「前職は医療従事者で、営業は未経験からのスタートでした。ノルマはありませんでしたが、花岡社長からは『とにかくバットを振っていけ』と言われて。最初の半年くらいはあちこちバットを振ってみるものの空振りばかりでしたね。それでもあきらめずに振り続けていたら、だんだん道が開けてきました」
花岡「乾さんはちょっと難しいお客様とも、いつの間にかいい関係を築いてくるんですよね。今ではサウナ業界で幅広い人脈を築いていますよ」
一方、広報担当の山中さんはスーツ業界から花岡工務店へ。
花岡「山中さんが前の業界にいた頃から付き合いがあって、人柄を知っていました。僕は職人を集めるのは得意なんですが、何かを発信して自分たちの商品を世に出していくような動きはできないんですね。せっかくいいメンバーが集まっているし、会社を残していかなければと思ったときに、山中さんの力があったらすごく伸びると思ったんですよ」
入社後の山中さんはPM(プロジェクトマネージャー兼ポジティブモンスター)として、見ると元気がもらえるインスタグラムの更新をはじめとする、積極的な広報活動を展開しています。

乾「僕が体当たりで営業に行って、山中の発信力のおかげで問い合わせも来る。2人の力がシンクロして、今の良い結果につながっているんだと思います」
花岡工務店に欠かせない存在となった山中さんと乾さん。しかし、花岡さんを慕って集まっている職人の存在も大きいといいます。
花岡「つくり手がいるというのは強みですね。本格的にサウナを造れる工務店が他にはほとんどないので、市場で高いシェアを占めることができています」
山中「建築業界は元請が一番上のピラミッド型の取引形態が多いんですが、本来、工務店はいろいろな匠の人たちと助け合いながら成立する事業だと思うんです。花岡工務店はそれを実践しています。『縁をつなげて花となる』をモットーにご縁を大事にしているので、協力してくれる会社や職人さんととても仲が良く、できない仕事はないといっていいほどです」
花岡「僕たちはチーム”キカクガイ”と呼んでいるんですけど、仕事ができるメンバーばかりです。僕は本当に人に恵まれています」
サウナで摂津を盛り上げる

ブランド名の『摂津サウナ』は、摂津でサウナを盛り上げようという意味で名づけられました。そして今、花岡工務店はサウナ造りから飛び出して、「場所づくり」に挑もうとしています。
花岡「本社の隣の土地をお借りして、道の駅のような人が集まれる複合施設を作ります。『摂津サウナ』のショールームのほかにレンタルスペースを作って、一緒に盛り上げようと言ってくれている仲間に使ってもらおうと考えています。あとはキッチンカーを呼んだり、月1、2回はイベント会場にする予定です」
一般的な工務店の範疇を超えたプロジェクト内容は、まさに”キカクガイ”。
山中「摂津市はものづくりの街である一方、映画館も遊園地も大型ショッピングモールもないんですね。だから摂津市の人に『摂津ってどんな街?』と聞くと『何もない』っておっしゃられるんですけど。でも今、摂津はサウナの街だという旗を上げたら、10年後には摂津=サウナの街になってくれるんじゃないかなと思っているんです。そのための場所づくりです」
花岡「間違いなく、そうなりますよ!」

花岡工務店には、摂津市だけではなくもう1つ盛り上げたいものがあるといいます。それは、建築業界です。
山中「僕はスーツ業界から建築業界にやってきたときに、イメージとのギャップにびっくりしたんですよ。建築業界は人気がなくて若手が少ないって言われているはずなのに、皆が生き生きと仕事をしているんです。でも、それを知るきっかけがない。職人がどれだけ綺麗な家を造っても、やっぱり目立つのはハウスメーカーや設計士ですから。知ってもらう機会がないから、なり手が生まれなくて当たり前なんですよね。でもサウナなら、つくり手を目立たせることができるんです。生き生きと働いている人がいることを知ってもらえたら、もっと業界の可能性が広がるし、働きたいと思う人も増えるのではないでしょうか」
年内には一期工事が終了予定で、すでにイベント開催の打診も来ているそう。
山中「サウナカーを集めたサウナイベントや、地元企業による飲食系のイベントを考えています」
構想を語る皆さんの顔は本当に楽しそうで、まさしく生き生きとしていました。
花岡「僕たちの合言葉は『わっしょい』なんですが、毎日楽しくて『わっしょい』って言ってます(笑)。夢の実現に向かって進んでいる感じが本当にわくわくするし、それがずっと仕事で続いたらいいなと思いますね」
夢は甲子園優勝⁉
高校球児で甲子園を目指していた花岡さん。実は今も、「夢は甲子園優勝」だと話します。
花岡「僕はよく甲子園でたとえるんですが、花岡工務店は甲子園に出場できるくらいの実力は持っていると思うんです。でも、優勝はまだまだ。これからはサウナ事業や複合施設の運営を柱に、甲子園で優勝できるような会社にしていきたいですね」
優勝条件の1つは、親が子どもに就職を勧めるような会社になること。
花岡「僕の子どもは18歳なんですが、花岡工務店には同じような年齢の子どもを持つ世代が多いんです。子どもたちが『入社したい』と言ってくれて、親も止めずに『おいで』と言うような会社になったら、甲子園で優勝できるチームになったといえますね」
取材後記
取材中、楽しそうに会社や事業のお話を聞かせてくださった花岡工務店の皆さん。目を輝かせながらお話しくださるその姿は生き生きと輝いていて、本当に高校球児のようでした。「自分がワクワクすることをやっていたら、自然と夢が形になっていく」と語っていた山中さんの言葉通り、お互いをリスペクトし合い、楽しみながら前へ進んでいく花岡工務店なら、必ず摂津市や建築業界を良い方向に変えてくれると思います。まずは、複合施設の開業が楽しみです。
花岡工務店のwebサイトはこちら https://www.8702bld.com/
株式会社花岡工務店
代表取締役|花岡 雅仁
創 業|2004年
本社所在地|〒566-0055 大阪府摂津市新在家2-1-19
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取材・記事|ヤグチサトコ

