本記事は、昨年度までに実施した【新事業展開テイクオフ支援事業】の伴走支援に参加いただいた事業者さまを取材したものです。伴走支援期間を経た現在の状況や、これからの展望についてお話を伺っていきます。
金属表面に、色・質感・機能性という“付加価値”をまとわせる表面処理。国分技研株式会社は、その現場で「選ばれる理由」を増やし続けてきました。代表取締役の二宮慎一郎さんは、産創館やMOBIOなど中小企業支援のメルマガで事業を知り応募したといいます。「募集の途中で知って申し込んだと思う」。結果的に「2年連続で2回は応募させてもらった」と振り返ります。

アルマイトの多色展開——“常時10色”を言い切る
テイクオフ支援の1回目は、アルマイトの多色展開に向けた設備導入でした。
「他社さんは、まず設備が整ってないですよ。来てから染料代もらって、納期もコストもかかって…という対応が多い。でもうちは常時10色できますよ、と謳っている。他社ではあんまりないですね」
多色は理想を言えば色数分のタンクが必要で、場所も管理も増えます。そこで二宮さんは現実解を積み重ねます。「完璧にはできないけど、1つの染料で濃さを変えて3色ぐらい作れる」。処理時間や条件を詰め、限られた設備でも色幅を出す運用を整備。営業上の“約束”を、現場の仕組みに落とし込んできました。

展示会では、来場者だけでなく出展者同士からも「カラーバリエーションを増やしたい」という要望が届くように。「これからやっていけるかなって感じ」と手応えを語ります。
研磨の強化——色だけでなく“仕上がりの好み”へ
2回目は研磨工程の性能を高める設備導入。
「昔は光ってるとかっこいいがあったけど、今は艶消しが流行ってたり。求められる仕上がりが色だけじゃなくなってきている」
光沢を出す研磨、艶消しはサンドブラストなど、質感の選択肢を増やすことが差別化につながる。サンドブラストは現状外注ながら、移転後に年内導入も視野に入れています。

現場の納得感をどうつくるか——数字を公開し、逆算で進める
新しい取り組みは、現場の負担も増えます。実際「多色は現場が正直嫌がる部分もある」と二宮さん。それでも踏み切るのは、価格競争に巻き込まれないためです。
「どこでもできる色は、価格競争に巻き込まれる。今はよくても将来的に安定しない」 だからこそ、毎月会議で事業計画を共有し、会社の数字も社員に公開。「設備投資がなかったら、この5年間で取ってきた新規のお客さんは取れなかった。数字で理解してもらって、それが賞与になり給与になる」。投資の意味を“結果”で語れる状態にしていきます。
次の課題は“知ってもらうこと”——SNSよりネットワーク
設備を整えた今、課題は告知と営業です。「製造業はSNSでは難しい。伸びないし向いてないと思う」。その代わり、展示会を軸に人と人のつながりを広げています。
「出展者同士の横の繋がりが広がっていくのが好き。前向きな企業さんばっかりで、情報交換しつつ助け合う」 産創館やマイドームおおさかなど、テーマが明確で“必要な人だけが来る”展示会は特に相性がよく、「必ず3〜4社は具体的な案件(見積もり等)が翌日に動く」
3〜5年後:少人数で倍へ。付加価値で勝負する
従業員は現在6名で、二宮さん(52歳)が最年長という若い組織。「2人増員できた段階で売上は倍ぐらいに」。量を追う薄利多売ではなく、少量でも単価が取れる仕事を積み上げたいと話します。特定の1社に売上が偏るリスクを嫌い、「広く浅く」で分散する考え方も印象的でした。
さらに表面処理業ならではの強みとして、「ありとあらゆる業種から依頼が来る」ことを挙げます。情報が集まる“ハブ”になれるからこそ、得意な加工先を紹介したり、図面(CAD)対応まで含めて相談を受けたりと、ネットワークを価値に変える構想も。「管理の手数料もいただける。違う柱ができるかもしれない」と目を輝かせます。

移転は、老朽化した建物からの脱却でもあります。「修繕するどころの騒ぎじゃない古さ」。新拠点では動線を引き直し、設備配置も最適化できる。二宮さんが赴任した当初は「インターネットもなくて、伝票も手書き」だったというから驚きです。会計ソフト導入などのデジタル化も含め、現場の“当たり前”を更新し続けています。
「ちっちゃい違和感でも報告してほしい」。設備も人間関係も、予兆のうちに手を打つ、その姿勢が、少人数経営の強さになっていました。」
取材後記
最後に、二宮さんの言葉が胸に残りました。
「問題ないっていうのは問題だぞ。動けば必ず問題は出る。逃げずに解決していけば、人としても成長できる」
設備投資、営業、移転——課題を“兆し”のうちに拾い、共有し、解決する。その積み重ねが、国分技研の次の成長をつくっていきます。

国分技研株式会社
代表取締役|二宮 慎一郎
創 業|1966年
本社所在地|大阪府柏原市田辺1-16-22
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取材・記事|矢野貴朗

